WORLD BASEBALL CLASSIC 2023

大型選手揃いで虎視眈々と大番狂わせを狙うチェコ/カーネクスト 2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™ 東京プール 対戦国紹介

2023年3月10日 コラム

 昨年9月に行われた予選を勝ち抜いて悲願の初出場。年齢制限のない世界大会の出場はほとんど無かったものの、U-18ワールドカップなど、アンダー世代の世界大会では既に出場常連国となっている。
 欧州の中ではイタリア、オランダの二強に続く勢力の一角として頭角を現してきた国の1つだ。多くがチェコで生まれ育った国内リーグ所属の選手で構成されており、育成世代から地道に普及・強化してきた成果が今回の初出場に繋がった。


オリオールズ傘下でプレーしたマルティン・チェルベンカ

 予選の戦いぶりを見ると、4試合で10本塁打を放った長打力が目に付く。当然対戦する投手のレベルが上がる本大会では同じようにはいかないが、上位から下位まで身長190センチ級の選手が並ぶ打線はツボに入れば強い打球を飛ばせる選手で構成されている。連打よりも出会い頭の一発の怖さを秘めており、1次ラウンドが本塁打の出やすい東京ドームで開催される点も有利に働くかもしれない。

 予選で打線の軸となっていたのは、マレク・フルプとマルティン・チェルベンカの二人だ。
 フルプは15年に日本で行われたU-18ワールドカップで16歳ながら4番を打つなど、若くして将来を嘱望されてきた選手だ。193センチの長身からの長打力が魅力の大砲でありながらスピードや強肩も兼ね備えた5ツール型の外野手でもある。現在はアメリカの大学で活躍しており、将来的にはドラフト指名を受けてチェコで生まれ育った選手では初めてのメジャーリーガーとなることが期待されている。
 一方のチェルベンカは、チェコで最もMLBに近づいた選手と言われている。長らくマイナーリーグに在籍し、21年にはメッツ傘下の3A級でプレー。昨シーズンからは国内リーグに復帰しているが、43試合で15本塁打を記録。打率も4割を超えるなど格の違いを見せつけている。捕手としての評価も高く、まさしく攻守において大黒柱となる存在だ。さらに本大会からはチェコ出身の母親を持つ元メジャーリーガー、エリック・ソガード(元カブス)も加わり打線はさらに厚みを増すことになる。

 大柄な選手が多いながら「動けて守れる」点も見逃せない。WBC本大会レベルでは標準とも言える守備力かもしれないが、内外野ともに安定している。ドーム球場に不慣れという不安材料はあるものの、守備が破綻する心配はほとんど無いという点は1つの強みとして予選では際立っていた。


エリック・ソガードは2021年にカブスを退団

 投手陣に関しては、エースのような存在はいない一方、どの投手も一定のレベルには達している。野手と同じく190センチ級の長身投手が多く、140キロ前後ほどの球速が中心。日本が国際大会で苦手とする長身から角度のあるクセ球を投げる投手が多く、タイプも多種多様だ。
 NPB勢との強化試合から中国戦、韓国戦とアジア勢との対戦が続いた後という流れを考えても、欧米タイプのメカニックから動くボールを投げるチェコの細かい継投に日本が苦戦する可能性は十分にあるだろう。

 2007年に行われた北京オリンピックのプレ大会で日本はチェコと対戦経験があり、星野仙一監督率いる日本代表はドラフト候補の大学生とファームの若手の混成チームで出場。チェコ戦は2点本塁打を浴び失点、打線はクセ球の投手陣に苦しみ、延長でサヨナラ勝ちの辛勝だった。もちろん、トップチームである今回の日本相手に同じようにはいかないかもしれないが、チェコもあれから大きく進歩を見せている。
 チームの戦力的には、同様に初出場ながら2013年の第3回大会の初戦で日本を苦しめたブラジルに近い水準にある。チェコでは国営放送のスポーツチャンネルでWBCの中継が行われることになっており、野球への注目も高まってきている。初出場の喜びや大観衆の前で戦えることもモチベーションに、日本戦では大番狂わせを狙っている。